「おめでたい」と「たい」の語呂合わせから「目出鯛」(めでたい)と呼ばれる鯛。
昔から縁起物ものとして重宝され、景勝地・鞆の浦には福山市指定無形民俗文化財の伝統漁法「鯛網」があります。
その鯛という名を冠したお菓子が同じ福山市内にあります。
勉強堂「本日鯛安(ほんじつたいあん)」
鯛をかたどった可愛い形と縁起のよい名前から人気の饅頭です。
商品開発をした勉強堂三代目当主は、慶事に用いられる紅白饅頭に代わる「福山らしいお菓子で「ハレ」の日にピッタリなおめでたいお菓子を作りたかった」と話されます。
「本日鯛安」は、「桃山」と呼ばれる生地を使っています。
白餡、黄身などを練り込んだ伝統のお菓子で非常に人気があります。
鞆の浦沖が鯛の産卵場所となっていたことから、餡には鯛の卵に見立てた青豆鹿の子が入り、お祝いの気持ちを込めた心意気が感じられます。
袋から取り出し手のひらにのせて愛らしいフォルムを楽しみたくなります。
その可愛さから、頭からか?尾から?と悩むところですが・・
食べたい気持ちはおさえきれず、ひとくち含みます。
桃山生地がほろほろとほどけ、口の中で溶けていく感覚がたまりません。
焼き饅頭ではありますが、小豆餡の饅頭と違い、桃山生地の黄身餡と白餡のコラボは軽やかな口あたり。
餡がしっとりと混ざり合い、柔らかい甘さが口いっぱいに広がり、幸せにしてくれます。
えんどう豆を甘く炊いた青豆鹿の子がアクセントとなり、より奥深い美味しさになっています。
懐かしい食感でありながら、口当たりは今まで感じたことがないきめ細やかさです。
生地と餡の量から、焼く温度と時間を絶妙に調整したからこそ、できる食感なのでしょう。まさに職人技です。
余談ですが、この鯛の形も伝統工芸の菓子木型から生まれています。
勉強堂の菓子職人たちが、一つずつ抜き取って「本日鯛安」は形成されていくとの事です。
一つ一つを積み重ね、職人の技から生み出されるからこそ、新しさの中に懐かしさを感じる味になっているのでしょう。
私は自分のラッキーフードにしてみたい。
パワーをもらいたい時に求めて、小ぶりだからカバンにしのばせて。
お供にする飲み物は、スパイスが効いたフレーバーティーも面白いかも。
「本日鯛安」をたずさえ友達の家に行ってみよう。
気が合う彼女のことだから、喜んでお気に入りの紅茶を丁寧に入れてくれるだろう。
まずはミルクティーで味わいます。白餡の上品な甘さとよく合う。
その後は、ジンジャーを少し入れてチャイ風味のフレーバーティーに。甘くなりすぎた口に味変で気分を変えてみる。
陽当たりの良い部屋で「本日鯛安」を取り出して形が可愛いだの、「鯛」は縁起がいいだのと会話が盛り上がる。
日常の何気ない会話に花がさき、話の合間につい取り出して、口に運んでしまいます。
「本日鯛安」の優しい甘さ、スパイスが効いたフレーバーティー。
そして気が合う友達との会話が、疲れた気持ちを包み込みパワーをもらえる気がします。
自然と会話が弾み、笑顔をくれるお菓子なんだなぁ。
今度はおばあちゃん家にも持って行こう。
もちろん手土産は「本日鯛安」。
おばあちゃんのことだから玉露を入れてくれるだろう。
コクのある玉露と頂く「本日鯛安」。
この組み合わせも会話が盛り上がりそうです。
意匠が鯛となれば、いろんなお祝いに欠かせないお菓子です。
結婚や出産の人生のおめでたい日に、菓子名の「本日鯛安」は生きる。
また傘寿と米寿のお祝いに「黄色」のものを贈る人が多いそうですが、そんなハレの席にも薄黄色の「本日鯛安」は映えるはず。
お礼や感謝の気持ちを込めた祝い返しのお菓子にもぴったり。
笑顔を思い浮かべながら、あれこれと贈る先を考える事は楽しいもの。
幸せなお菓子は、幸福な場所が似合う。
誰かの幸せを祝う、願うことで自分も幸せと感じさせるお菓子です。
ペンネーム:朝藤
和三盆の地、讃岐生まれの広島県在住。
東で和菓子のイベントがあると聞けば飛んでいき、西で季節限定のお菓子が発売されると聞けば駆けつける。
和菓子愛は誰にも負けない自信あり。
和菓子の話になると軽く2時間たってしまうので、普段はできるだけ抑えています。
和菓子の歴史と文化を世界中に知ってもらいたいという思いが強い、あんこが大好きな永遠の和菓子女子です。