和菓子には季節の果物を使った物が多数ある。
この時期限定の勉強堂の「千年(ちとせ)」もその一つ。
勉強堂の「千年」を心待ちにしている人は少なくない。
心躍りながら個包装を開けてみると、形良い干し柿の姿。
ふっくらした上品な和菓子に形を変えた「千年」が現れる。
干し柿の濃い朱色に、まぶされた氷餅のほんのりとした白さが上品な見た目を彩っている。
お腹あたりに白餡があふれみえて、待ちきれずすぐ口に運んでしまう。
一口いただくと肉厚ながら、ほどよいやわらかさ。
白餡は粒餡を使用しているようだ。
干し柿本来の歯応えを活かしつつも、見た目からは想像できない食感に驚く。
噛み締めると中から白餡が溢れ出て、口いっぱいにまろやかな甘さが広がる。
その甘さも後味が残らずスッとひいていく。
干し柿本来の甘さと白餡とのバランスが抜群だからこその味わいなのだろう。
食感と味、両方の満足度がイイ。
干し柿好きにはたまらない一品。
温かいお茶はもちろん、コーヒーなどとの相性も良いが、私はホットミルクで頂く。
仕事が終わった時や小腹がすいた時などホットミルクで食べると、体がリラックスできる。
何かの合間に食べて気持ちをリセットするのではなく、一仕事終えたご褒美という感覚に近い。
張りつめていた肩の力が抜けていくのがわかる。
もっとも一仕事終えると次の仕事が待っているが、ひと時でもこの時間を楽しむ事ができるお菓子だ。
最上級市田柿を一つずつ職人さんが種を取り除き、餡は北海道産の手亡豆を使った自家製白餡。
菓子名の字体は二代目の書によるもので、包装も機械に頼らず一つ一つを手作業によるもの。
手間暇を惜しまない姿勢が、美味しさを後押ししている。
平安時代の祭礼や織田信長が贈答用にするほど古くから人気の干し柿。
縁起の良い菓子名は店舗近くの地名からだそうで、大切な方への贈り物や、
おめでたいお席のお菓子としても、この「千年」はおすすめ。
ペンネーム:朝藤
和三盆の地、讃岐生まれの広島県在住。
東で和菓子のイベントがあると聞けば飛んでいき、西で季節限定のお菓子が発売されると聞けば駆けつける。
和菓子愛は誰にも負けない自信あり。
和菓子の話になると軽く2時間たってしまうので、普段はできるだけ抑えています。
和菓子の歴史と文化を世界中に知ってもらいたいという思いが強い、あんこが大好きな永遠の和菓子女子です。